エコーでの心拍出量の測定は、血流の断面積とその断面を通過するVTI (時間速度積分値)を掛け算して算出されます。心不全の評価だけでなく、弁膜症の重症度や短絡性疾患の逆流量・率の評価にも用いられます。
計測する際の全体的な注意点としては、
- きれいな描出よりも、ガイドビーコン (=インデックスマーカー, ターゲットマーカー etc)と血流の方向を一致させることを優先する。
- 2ch,4ch,5chを決められた正しい断面で描出する。(弁輪径の正確な測定)
- PWでは、流速を測定する断面を意識して、その断面上にROI(ロイ, 関心領域)を設定する。 (左室流出路、僧帽弁の弁輪の中央、肺動脈弁中央)
理論的な背景は置いておいて、まずは実際の測定の仕方に関して記載していきます。
左室心拍出量
左室の流出路で測定する左室心拍出量(LV-SV, left ventricular stroke volume)の求め方です。
必要な測定項目
① 左室流出路径(LVOT diameter)
② 左室流出路速度時間積分値 (LVOT – VTI, left ventricular velocity-time index)
計算式:
左室流出路面積(断面積) = (左室流出路径 / 2)2 × π
LV-SV = 左室流出路面積 × LV-VTI = (LVOTd/2)2 × π × LVOT – VTI
① 左室流出路径 (LVOTd, left ventricular outflow tract diameter)
傍胸骨左室長軸像で、左室流出路を描出し、そこをズームします。ある程度ズームした状態で、収縮期の左室流出路径を測定します。俗に内内といいますが、左室流出路の心内膜壁の内側の径を測定します。
この測定のため、内側のラインがきれいに判別できるように調整します。 focus、gainなどを調整するより、水平に近くなるように描出するのが重要かと思います。
② 左室流出路の血流時間速度積分(LV – VTI)
測定するのは、5腔像と3腔像で、左室流出路径を測定した断面にROIを設定して、PWを用いて、左室流出路VTIを測定します。 左室流出路に狭窄やS状中隔などにより加速血流がみられる場合には、加速していない部分にROIを設定して測定します。この、カラードプラーで左室流出路に狭窄や加速血流がないことを確認することはとても重要です。 全体的に加速血流となっていて、加速していない部分がない場合には左室流出路での心拍出量の推定は基本的にはできないため、参考値となります。
具体的には、心尖部の5腔像と3腔像で、左室の流出路に、まずカラードプラーを当てます。通常の初期設定にすると、左室抽出路に青い血流が見えると思います。もし、左室の中隔が流出路に少し張り出していて、そこに加速血流があった場合には、その部位を避けて、できるだけ均質なカラードプラーの位置にパルスドプラーを当てます。
ここで収縮期の左室流出路の血流の時間速度積分値(VTI, velocity time integral)を測定します。通常はきれいな放物線になるはずです。 左室流出路のVTIと流出路の断面積をかけることで、1回左室流出路が測定できます。 (断面積は、きれいに描出できれば直接断面を測定しても構いませんし、特に3Dエコーでは断面を長軸をみながら選べるので、正確に測定できると思います)
パルスドプラーは、時間を横軸、速度を縦軸にした図になります。VTIはその断面を通過した血液の移動距離となります。基準とする断面をゼロ平面とすると通過した血液という“柱の高さ(距離)”とイメージできます。ゼロ断面の上にある柱の長さの合計が心拍出量が同じになると考えます。下のplug flowの概念から、断面上の柱の高さはすべて同じと仮定しますので、柱の高さに断面積を掛けることで、心拍出量が計算できるという考えです。
右室心拍出量
右室流出路のVTIも測定しましょう。右室流出路は、傍胸骨短軸で、大動脈弁が正面視できる高さあたりで測定できます。 右室のほうが、左室よりも加速血流になっていたりしないので、その点では有用ですが、右室流出路径は、ほとんど肺動脈弁レベルでの計測でいいと思いますが、右心の血行動態によっては、拡大していたりすることもあるので、右室流出路径の測定は注意が必要です。
また、下に述べる大前提の流出路が筒状になっていないため、左室と異なり、弁のレベルでの測定になります。また、筒状になっていないこともあり理論的には左室ほど正確ではないと考えられます。
VTI測定の理論的な背景
心エコーのVTI(Velocity Time Integral)測定では、流体力学の分野における、連続の原理(continuity equation)とplug flow (層流ではない、同一断面上では速度が同じ流れ)ということが基盤となっています。
連続の原理
広い空間から狭い筒状流路へ流体が流入すると、質量保存則により筒状部分で流体の流速が一定化することが知られています。
左室という空間から左室流出路という筒状の流路に血流が流れ込むことに対して、この連続の原理を当てはめることで、VTIにより、心拍出量が測定可能であるとされます。

壁摩擦の仮定
また、VTI測定の前提として、壁面と血流の摩擦を無視し、層流プロファイルではなくplug flowと仮定します。
壁と流体の間、流体と流体の間には、摩擦が生じるため、中央が早くて、壁面に近いほど速度が低下する層流となりますが、左室流出路に入った直後では、流出路を形成する心筋内膜と血流との摩擦は無視できると仮定しています。
つまり、現実では上行大動脈などでは壁摩擦で層流となり、血流に速度勾配が生じるため、連続の式は適応できず、plug flowと仮定できるLVOTでは近似的に連続の式が成立するとしています。
これにより、心拍出量の非侵襲的評価が可能となります。

連続の原理と壁摩擦の仮定を総合的に使用
左室流出路内の血流の速度が一定であるとすると、流出路の任意の点で測定した血流速度を時間で積分した値は、どこでも一定となります。
ただ、実際には、左室内膜と血流との摩擦がありますので、これが極力無視できる、左室側に近い部分で、かつ流出路の中心に近い部分にROIをおいて、VTIを測定します。
流出路の断面が正円であると仮定して、流出路の直径から流出路面積を求め、この面積に、VTIをかけることで、この断面を通る全血流量、つまり1回心拍出量を計算しています。
さらに、心拍出量は、どの断面においても等しいという前提が、狭窄部でも適応されるとしたのが、大動脈弁狭窄の連続の式による有効弁口面積の測定になります。
