コレステロールのこれから ― 量だけの評価から、粒子数を踏まえた評価へ

はじめに

コレステロールについては新たな知見が集積しつつあり、近い将来、血液検査の評価項目が見直される可能性があります。

すぐにではありませんが、今後は 量・濃度としてのnon-HDLコレステロール と 数としてのApoBおよびLp(a) がより重視されると考えられます。

本稿ではまず、LDLコレステロール測定の「計算法」と「直接法」の特徴と問題点を整理し、なぜLDL-C単独よりもnon-HDL-Cの評価が重要なのかを述べ、最後にLp(a)についても触れます。


LDLコレステロールの直接法と計算法

LDLコレステロールには 計算法直接法 があり、通常はよく相関します。

  • 計算法:代表的なのは Friedewald式。TGが400mg/dL以上では適用できません。
  • 直接法:TG高値でも正確に測定可能です。ただし、ここに臨床的な問題があります。

TGが高い状況では、コレステロールはLDL粒子から他のVLDL粒子やIDL粒子へ移行するため、LDL粒子に含まれるコレステロールは低下し、LDLコレステロールは低い値になります。この測定値そのものは正確ですが、LDL粒子から移行したVLDL粒子やIDL粒子に含まれる悪玉コレステロールを評価していないため、 動脈硬化を惹起するアテロジェニック・コレステロール(atherogenic cholesterol)全体を過小評価してしまい、リスクを適切に評価できていないことになります。


TG変動がもたらす誤解

直接法でも計算式でも、結局評価しているのはLDLのみのコレステロール量であり、アテロジェニック・リポタンパク全体(LDL+IDL+VLDL)に含まれるコレステロール量を反映しているわけではありません。

TGが高いとLDL-Cは「低く」見えることがありますが、これは LDL粒子中のコレステロール量が減っただけであり、VLDLコレステロールやIDLコレステロールは増加しており、動脈硬化リスクはむしろ高い可能性があります。

特に糖尿病やメタボリックシンドローム、急性期反応など、TGが変動しやすい症例では、LDL-C単独での管理は危険です。


non-HDLコレステロールの強み

non-HDLコレステロール = 総コレステロール − HDLコレステロール

この単純な式で求められるnon-HDLコレステロールには、LDL・IDL・VLDLなど、すべてのアテロジェニック・リポタンパクが含まれます。

極論を言ってしまえば、血中のコレステロールは、HDL粒子に含まれるコレステロール以外は悪玉コレステロールであり、この式は、悪玉コレステロールの総量を表していると言えます。

non-HDLコレステロールの利点は以下の通りです。

  • 包括性:悪玉コレステロール全体をカバーできる
  • 簡便性:総コレステロールとHDL-Cがあれば算出可能
  • 安定性:TG変動の影響を受けにくい
  • 予測力:高TG血症や糖尿病患者ではLDL-Cより優れる報告多数

AHA/ACCや日本動脈硬化学会(JAS)のガイドラインでも、non-HDLコレステロールはLDLコレステロールの補助あるいは代替指標として推奨されています。ただ、今後、このガイドラインの記載はnon-HDLコレステロール中心に変わるだろうと個人的には考えています。


現状の治療薬とnon-HDLコレステロールを中心にした管理

現状の治療薬はスタチンなど、LDLコレステロールを低下さる薬剤が中心ではあり、これ自体は続いていくと思います。ただ、LDLを下げればいいのではなく、あくまで治療の目標は動脈硬化を予防することであり、「悪玉コレステロール全体の低下」させることです。

したがって、non-HDLコレステロールが十分に低下していないのに「LDLが下がったから」と治療を緩めるのは不適切であり、あくまでnon-HDLコレステロールが適正値に下がるまで、LDLコレステロールを低下させる必要があります。

ApoBとLp(a)

今後は、粒子数そのものを評価するApoB100 が重要になると考えています。ApoB100はアテロジェニック粒子1個に1分子存在するため、悪玉粒子総数を直接反映します。なお、測定値の単位は、molになります。
これに関しての文献的な言及は、Circulation(#)など多くなされており、LDL濃度による評価が今まで行われていたが、ApoBを測定し、粒子数を把握するほうがより動脈硬化のリスクを高精度に判定できるという方向で一致しています。
そのため、今後の臨床では、スタチンが中心の治療は変わりませんので、日常的にはnonHDLコレステロールを指標に治療を行い、補助的にApoBないしLP(a)のモル数を把握し、動脈硬化性惹起性を補足的に評価するという形になろうと思います。

(#: De Oliveira-Gomes D, Joshi PH, Peterson ED, Rohatgi A, Khera A, Navar AM. Apolipoprotein B: Bridging the Gap Between Evidence and Clinical Practice. Circulation. 2024;150(1):1–12. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.124.068885)
Apolipoprotein B Particles and Cardiovascular Disease (Sniderman AD ら, 2019)
ApoB100 and Atherosclerosis: What’s New in the 21st Century? (Kounatidis D ら, 2024)
ApoB, LDL‑C, and non‑HDL‑C as markers of cardiovascular risk: discordance analysis (Sehayek D ら, 2025)

さらに、特に動脈硬化惹起性が高いとされる Apo(a)、それがApoBと結合した Lp(a) の粒子数評価もリスク層別化に不可欠と判明してきました。現在、Lp(a)を標的とした治療薬(注1)が開発中であり、今後の脂質管理に大きな変化をもたらしていくと考えています。

補足:Lp(a)とは

Lp(a)は、LDL様粒子(ApoB-100を含む)の外側にアポリポタンパク(a)【Apo(a)】が結合した構造を持つリポタンパクです。

Apo(a)はプラスミノーゲンに類似した構造を有し、以下のような独自の作用で心血管イベントを増加させることが知られています。

  • 血栓溶解を阻害
  • 酸化リン脂質を運搬
  • 動脈硬化や大動脈弁石灰化を促進

Lp(a)はApoB100にしか結合しない

Apo(a)は、ApoB100にのみ結合する性質を持ちます。

具体的には、LDL粒子にあるApoB100のリジンリッチドメインとジスルフィド結合を形成し、Lp(a)粒子が完成します。

この結合は強固であり、ApoAやApoC、ApoEなど他のアポリポタンパクとは結合しません。

また、

  • 血漿中濃度の依存性
  • 酸化ストレスや炎症環境の影響

が関与する可能性が示唆されていますが、決定的な制御因子はまだ特定されていません。


LPA遺伝子多型とLp(a)濃度: LPA遺伝子のKIV-2リピートがカギ

LP(a)濃度は、約90%以上が遺伝的要因で決まるとされています。【Circulation 2019;139:e560–e582】。Apo(a)は、1分子あたりの分子量が人によって異なります。その差を生むのがLPA遺伝子のkringle IV type 2(KIV-2)リピート数の違いです。その原因がKIV-2というリピート構造で、このリピートの数が遺伝的に決まっていると言われています。リピートと動脈硬化の惹起には関連性はないので、別に分子量が多いからだめということはありません。数のほうが重要です。そのため、Lp(a)はモルで評価することが重要です。

同じLP(a)濃度の人が2名いるとします、その時

  • KIV-2リピート数が少ない → 小型Apo(a)を作り、1LあたりのLp(a)個数は多くなる
  • KIV-2リピート数が多い → 大型Apo(a)となり、1LあたりのLp(a)個数は小さくなる

このLPA遺伝子多型は個人ごとに異なり、生涯ほとんど変化しません。

このようにApo(a)に関しては、分子量が個人で異なります。動脈硬化へのリスクとしては、Lp(a)の数、つまりAPO-B100に結合したApo(a)の”数”が重要とされています。そのため、Lp(a)に関しては、濃度ではなく、数の単位であるnmol/Lで評価する必要があるとされています。

日本ではmg/dlという濃度でLp(a)が測定されていますが、個人によって分子量が違うため単純にnmol/mlに変換できず、国際的な比較ができない状況になっています。


まとめ

  • LDL-Cには直接法と計算法があるが、TG高値時にはいずれも限界がある
  • TG高値では、LDL-Cが低く見えてもアテロジェニックコレステロールはむしろ増加している可能性がある
  • 血液検査で、総コレステロールを測定しないとnon-HDLコレステロールが算出できず、リスク過小評価につながる可能性がある
  • non-HDLコレステロールを基本指標とした脂質管理が本来の姿であると考えている
  • 将来的にはnon-HDLコレステロールの量だけでなく、ApoB100やLp(a)といった 粒子数レベルでの評価が新たなスタンダードになる
注1:

臨床治験中の薬剤:
Pelacarsen(ペラカルセン): 肝臓でapo(a) mRNAを標的としてLp(a)産生を抑制。

  • 第2相試験:日本人を含む被験者で、20–80mg投与によりLp(a)を約55~74%低下。

Yeang C, Witztum JL, Tsimikas S. J Am Coll Cardiol 2022;79:1013–1024. doi:10.1016/j.jacc.2021.12.032

  • 第3相試験:HORIZON試験(NCT04023552)、8,323例で心血管イベント抑制を検証中、2025年に結果公表予定。

Cho L, Nicholls SJ, Nordestgaard BG, et al. *Am Heart J.*2025;287:1-9. doi:10.1016/j.ahj.2025.03.019

他 Lepodisiran, Olpasiranなど多数臨床試験中


参考: ガイドラインで使われるLDL-Cの正体

多くの国際的大規模試験や過去のガイドラインで用いられてきたLDL-Cは、実は直接測定値だけでなく計算式による推定値も使われています。また、中性脂肪値で制限をかけていることがほとんどです。

Friedewald式: (LDL−cho) = (Total-cho) − (HDL−cho) − (TG/5)

ここで登場する TG/5 はLDLとHDL以外に含まれるコレステロールの推定値である。

TG 400mg/dL以上ではこの推定値がずれるため、この計算式を使用することはできないとされる。


大規模試験とLDL測定法

以下は、測定法が明記されている代表的な大規模試験です。

意外に最近のものほど計算法が用いられています。

試験名年代LDL測定法備考
4S(Scandinavian Simvastatin Survival Study)1994計算(Friedewald)高TGでは計算不可、除外あり
WOSCOPS1995直接測定均質法
HPS(Heart Protection Study)2002直接測定酵素法
PROSPER2002直接測定均質法
ALERT2003直接測定均質法
PROVE-IT TIMI 222004計算(Friedewald)高TG時は別法
TNT(Treating to New Targets)2005計算(Friedewald)TG高値時は直接法
JUPITER2008計算(Friedewald)TG ≥400 mg/dLは計算不可
FOURIER(evolocumab)2017計算(Friedewald)低LDL時は改良式
ODYSSEY OUTCOMES(alirocumab)2018計算(Friedewald)LDL<15 mg/dLやTG ≥400時は別法

FOURIERでは低LDL時のMartin-Hopkins式、ODYSSEYでは超低LDLや高TGに直接法など使用。